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コラム
2024年11月08日

相続税の調査官はとにかく金(きん)に目の色を変える!【BAMC税理士 西村 敦正】

秋も深まり、相続税の税務調査も大詰めを迎えるこの時期。
今日は相続税の税務調査官が、とにかくこのキーワードには目の色を変えて色めき立つ「金地金」についてお話ししましょう。

税務調査の現地調査で「金」というワードが話題に出ると、調査官の声のトーンが確実に上がり、目の色が変わり、空気が変わるのがわかります。

相続税は財産価値のあるものに課税されるため、高額な絵画、骨董品、ダイヤモンドやプラチナ、真珠などの装飾品も当然課税対象です。

しかし、ダイヤモンド、骨董品、絵画に対しては、調査官の声のトーンは上がりません…。

なぜでしょうか?
これには大きな理由があります。その答えは明快です!
税務職員も一般の人間であり、真珠やダイヤモンド、絵画が本物か贋作かを見極める能力はありません。

仮にピカソの本物の絵画が調査官を通す応接間に飾られていても、それが本物であると判断し、「申告書に記載がありませんね!はい、2億円の申告漏れです。」と断言する能力はないため、まず指摘されることはないのです。 唯一指摘されるケースとしては、そのピカソの絵が亡くなる数年前に購入され、通帳に2億円の支出が記録されている場合です。大きな支出は徹底的に調べられるため、支払先が画廊であれば、絵画の存在がチェックされるでしょう。

一方で、代々承継された財産で、先代の相続でも相続財産に計上されていなければ、「贋作ですよ」と回答した相続人から絵画を取り上げ、専門の鑑定士に依頼するようなことは調査官にはできません。 なぜなら、相続人本人も「本物だ」と伝えられていたとしても、何でも鑑定団に出さなければ本当の価値はわからないのですから、申告しなかったとしても脱税行為とは言えないのです。

GINZA SIXには刀の販売店があり、1本1,000万円の名刀が並べられていますが、床の間から出てきた刀について、調査官が本物かどうか判断する能力はありません。(実際に「鞘から抜いて見せてください」と言われたこともありますが、その後話題に上がらずスルーされたこともあります)

したがって、床の間から刀が数本出てきたとしても、それは無視されます。

しかし、金だけは別格です!

なぜなら、本物の金には本物を示す「刻印」が必ずあるからです。金の純度により、「日本国旗に999」や「K24」、「K22」などの刻印が定められています。 ぜひ「金の刻印」で検索してみてください。 つまり、金の質感を見抜けなくても、刻印を確認するだけで本物かどうかがわかります。しかも、金の価格は相場で明確なため、亡くなった日付の申告漏れについて、すぐに「いくらです!」と指摘できるのです。

加えて、金の20年前の価格は1gあたり1,100円でしたが、2024年11月7日現在では14,000円。12倍以上の価値です。ちなみにプラチナは2,300円が5,400円で、およそ2倍程度。この点も、調査官が色めき立つ理由の一つです。

昭和の時代には、企業の50周年記念などで純金のメダルを記念品として配るケースもよくありました。 私にも苦い経験があります。銀行の貸金庫から聞いたことのない企業の記念硬貨が出てきて、財産価値があるとは思わず見逃してしまいましたが、調査官は金の刻印について徹底的に教育されています。 その刻印を読み取られ、数百万円の計上漏れにつながってしまったことがありました。

つまり、昔価値が低かった時代に出回った金は、持っている本人が価値を知らないまま調査の日を迎えるため、現在の価値を知る調査官がこれを発見すると、色めき立つわけです。

ですから、金色の物体を見つけたら、まず刻印を確認しましょう。

しかも、現在高額な金に相続税が課税され、いざ相続税を納めるために金を売ろうとすると、金は所得税の総合課税となるため累進税率が適用され、最大で55%の税金が課されることもあります。 税金を払うために金を売ったのに、そこで半分程度の税金が取られてしまうと、相続税を払ったらほとんどお金が残らないため、悩みは尽きません。

金を見つけた際には、ぜひご相談ください。