相続税の納税のこと

相続税の計算上、ある一定額以上の財産がある人から相続税が課税されます。
ある一定額のことを基礎控除といい、税金がかからないボーダーラインになります。
基礎控除は、平成26年12月31日以前は現在よりも金額が 高く、
仮に法定相続人が3人の場合、定額控除5,000万円+1,000万円×3人=8,000万円でした。
しかし税制改正により縮小され、現在は当時の60%の金額となってしまいました。
これにより相続税を負担する人の数は非常に多くなったのです。過去の相続の際、相続税の課税がなかった人も、
今後は納税の発生する可能性が出てきますので注意が必要です。

相続税の納税
相続税がかかる財産
相続税の計算
スケジュール

相続税の納税

ボーダーライン(基礎控除)を超えている?超えていない?

基礎控除とは?

○定額控除3,000万円
※平成26年12月31日以前 5,000万円
○法定相続人比例控除600万円 × 法定相続人の数
※平成26年12月31日以前 1,000万円×法定相続人の数
[例]法定相続人3人の場合

正味遺産額とは?

被相続人(お亡くなりになった方)が残した正味遺産額(※)が相続税の課税対象になります。
正味遺産額A 資産B 負債C 葬儀費用
相続税がかかる財産、いわゆる正味遺産額は、対象の人名義の資産をそれぞれ現在の時価で評価し、負債・葬儀費用を除いて計算します。

相続税がかかる財産

A 資 産

  1. 現金
  2. 普通預金・定期預金
  3. 土地・家屋
  4. 有価証券
  5. 自社株式
  6. 生命保険契約に関する権利
  7. 貸付金・・・個人、法人
  8. ゴルフ会員権
  9. 家財 など
  10. みなし相続財産
  11. 死亡保険金 非課税枠あり
  12. 死亡退職金 非課税枠あり
1. 預金
通帳の残高
2. 有価証券
上場株式 株式数×現在の時価単価
投資信託 運用報告書に記載されている時価
3. 自社株式
会社の決算申告書により評価
※自分が会社オーナーで非上場株式を保有している場合は
 個別にご相談ください。
4. 生命保険契約に
 関する権利
(契約者)父(被保険者)子(受取人)父のような 契約形態の生命保険解約返戻金相当額が評価額
5. 貸付金、未収金
親族、他人にお金を貸している金額
自分が会社オーナーで自分の会社への貸付金や 会社からもらっていない給与など
6. ゴルフ会員権
市場での売買価格×70%
7. 家財など
車(市場での売買価格)、絵画(鑑定評価)、金(取引時価)ほか

8. 土地
土地の相続税評価額は?
路線価(1㎡単価)×土地の面積(㎡)土地の相続税評価額
●銀座西五丁目交差点付近の土地の価格は?路線価 1㎡ 8,660,00円
都心の土地の評価は路線価で評価します。路線価とは、国税庁が路線ごとに1㎡当たりの価格を付しており、毎年7月に今年の価格が発表されます。土地の評価方法は、厳密には土地の形や間口の広さなどを加味して計算していきます。また相続する土地が住まいの場合、要件に該当すれば小規模宅地等の特例を適用して土地の評価額を80%減額することも可能です。まずはおおよその評価額を知ることが大切です。

9. 建物
建物の相続税評価額は?
自宅の場合固定資産税評価額
アパートの場合固定資産税評価額 ×(1-借家権割合×賃貸割合)
建物の評価額は、固定資産税評価額にもとづいて計算します。建物は築年数の経過に応じて評価額が下がり、他人に賃貸している物件であれば、他人との権利関係が発生するため、評価額は自家用の70%の金額に減額されます。固定資産税評価額は、市町村役場の固定資産税課で書類を入手するか、毎年4月頃に届く固定資産税納付書と同封される課税資産明細書で確認できます。

10. みなし相続財産
●死亡保険金
 死亡時に入金される金額-非課税枠=課税対象額
  • 非課税枠 法定相続人の数×500万円
  • 非課税枠を超える金額が課税対象
    法定相続人が母、長男、長女の3人の場合、非課税枠は1,500万円。
    仮に長男が1人で死亡保険金1,500万円を受け取ったとしても、非課税は変わらず1,500万円となります。
    受取人が誰かに関係なく非課税枠が設けられています。
●死亡退職金
 死亡時に会社などから入金される金額-非課税枠=課税対象額
  • 非課税枠 法定相続人の数×500万円
  • 非課税枠を超える金額が課税の対象

B 負 債

  1. 借入金
  2. 未払医療費、税金
  3. 預り敷金、保証金・・・不動産賃貸業
  4. 保証債務・・・求償できない部分 など
1. 借入金
住宅ローン、オートローン、賃貸不動産の購入ローンなど
2. 預り敷金、保証金
賃貸不動産の借主からの預り金

C 葬儀費用

葬儀費用
通夜、葬式の費用、戒名料など
※領収書が出ないものは、日付、支払先、金額のメモを残してください。

相続税の計算

●正味遺産額が 1億2,000万円  
●法定相続人が妻と子2人とすると・・・
1. まず、『課税遺産総額』を
求めます
2. 続いて、『法定相続分に応じた取得金額』を求めます
※相続割合参照
3. 次に『相続税の総額』を
求めます
※税率表参照
相続税の計算方法は、正味遺産額がホーダーライン(基礎控除)を超えた部分に直接税率を掛けるのではなく、法定相続分で相続したと仮定して分けた財産に対してそれぞれ税率を掛けて計算します。相続税の総額が算定された後、実際の相続分に応じて相続税を負担します。たとえば長男と長女が1/2ずつ財産を相続した場合は、810万円×1/2=405万円ずつ負担。また配偶者である妻が全額相続した場合は、納税額は0円。配偶者の相続分は税金計算上優遇されており、税額軽減の申告を行うことにより財産の1/2または1億6,000万円、いずれか大きい金額まで納税額は0となります。相続財産が30億円ある人でも、配偶者が財産の1/2の15億円まで相続税の負担をせずに財産を引継ぐことが出来ます。
■相続割合 
法定相続人の状況法定相続分
配偶者配偶者以外配偶者父母兄弟姉妹
いるいない1  
子がいる1/21/2  
父母がいる2/3 1/3 
兄弟姉妹が
いる
3/4  1/4
いない子がいる 1  
父母がいる  1 
父母がいる   1
■税率表(国税庁HPより引用)
法定相続分に応ずる
取得金額
税率控除額
1,000万円以下の金額10%-
3,000万円以下の金額15%50万円
5,000万円以下の金額20%200万円
1億円以下の金額30%700万円
2億円以下の金額40%1,700万円
3億円以下の金額452,700万円
6億円以下の金額50%4,200万円
6億円超の金額55%7,200万円
【参考:財産別・相続人別相続税シミュレーション】

相続税シミュレーション①

(1)相続人が配偶者と子の場合【一次相続を想定】
※遺産(課税価格の合計額)とは、「相続財産等-債務・葬式費用等」(基礎控除前)の金額です。
※万円未満四捨五入
※配偶者が遺産(課税価格合計額)の法定相続分(2分の1)を取得し、配偶者の税額軽減特例を適用して計算しています。

相続税シミュレーション②

(2)相続人が子のみである場合【二次相続を想定】
※遺産(課税価格の合計額)とは、「相続財産等-債務・葬式費用等」(基礎控除前)の金額です。
※万円未満四捨五入
上記は、対象の人の財産金額、相続人の状況に応じて相続税額をシミュレーションした表です。実効税率は、正味財産に対して負担する税額を計算したものです。一次相続の計算は、すべて配偶者が相続財産の1/2を相続して配偶者の税額軽減の特例を受けた場合の税額計算となっています。一次相続の時に、配偶者が多くの財産を相続すれば相続税は少なくすむでしょう。しかし二次相続の時には、配偶者の相続財産と自分固有の財産を合算して計算するため相続税は高くなる可能性があります。配偶者が一次相続でどの程度財産を相続するべきか、二次相続の税負担も試算をしたうえで、配偶者の相続分を決める目安にすることも大事な考え方です。

スケジュール

【相続の手続き】相続スケジュール

相続放棄または限定承認
 
(3ヶ月以内)

相続の放棄または限定承認をする場合には、
その旨を家庭裁判所に申述します。
● 単純承認

相続人が亡くなった人の土地の所有権等の権利や借金等の義務をすべて引き継ぎます。

● 限定承認

亡くなった人の債務がどの程度あるか不明で、
財産が残る可能性もある場合には相続人が
相続によって得た財産を限度として
亡くなった人の債務の負担を引き継ぎます。
実務上、限定承認の手続きをする事はほとんどありません。

● 相続放棄

相続放棄は、3カ月以内に家庭裁判所に申し立てを行い、
亡くなった人の権利や義務を一切引き継がず放棄します。

相続人の青色申告の届出
 
(4ヶ月以内)

相続人が亡くなった人の賃貸不動産や事業を
引き継ぐ場合、引き継ぐ相続人が新たに青色申告の届出をする必要があります。

準確定申告
 
(4ヶ月以内)

準確定申告は、亡くなった人が死亡した年の1/1~死亡した日までの所得税確定申告のことをいいます。
納税者が亡くなった場合、自分で確定申告できないため、相続人が代わりに確定申告を行います。
●準確定申告の納税額
  • 遺言・遺産分割協議によって相続分が決まっている場合は、その相続分に応じて負担
  • 決まっていない場合は、法定相続分に応じて各相続人が負担
●準確定申告の還付金
  • 遺言や遺産分割協議によって相続分が決まっている場合は、その相続分に応じて受取り
  • 決まっていない場合は、法定相続分に応じて相続人が受取り還付金は、代表者が税務署に委任状を提出してまとめて受取ることも可能です。
    還付金は相続税の課税対象となるため、相続税の期限に間に合うように準確定申告をすませる必要があります。

相続税の申告・納付
 
(10ヶ月以内)

相続税の納税は期日内に現金で一括納付が原則です。納税が困難な場合、延納や物納の制度もありますが、手続きが複雑なため事前準備が必要です。

相続人の青色申告の届出
 
(4ヶ月以内)

遺産の分け方が決まった後、遺言書または遺産分割協議書の内容によって、不動産等の名義変更の手続きを行います。名義変更の手続きは、具体的な期限は決められていません。しかし手続きをせずに放置してしまうと、不動産の売却やそれを担保にお金を借りることも出来なくなってしまいます。仮に相続税の課税がないため遺産の分割手続きをせずに、長年放置した場合、相続人が亡くなり次の世代の人が手続きに協力しなければ名義変更手続きを行うことは出来ません。
相続人の数が増えると話がまとまりにくくなります。
相続後、なるべく早めに手続きをすませるようにしましょう。